インタビュー

カレーライスの代名詞ともいえるカレーハウスCoCo壱番屋。オープン当初から人々に愛され、不動の人気店に君臨した同店の愛され続ける秘密とは。代表取締役である浜島氏に迫る。

カレーハウス「CoCo壱番屋」を始め、あんかけスパゲッティの「パスタ・デ・ココ」など、日本国内に1,234店舗、海外に85店舗、計1,319店舗(平成24年7月末現在)を展開する株式会社壱番屋。景気動向に左右されない店づくりと今後の展望について、代表取締役である浜島氏に聞いた。


――まず始めにここ数年不景気が続いていますが、現在の飲食業界の動向についてどうお考えですか?

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正直ほとんど考えていません。景気が悪いと言われると「そうかな?」と思うぐらいで、弊社の状況としては既存店ベースで100%割っている状態なんですが、1番上と下の違いは大きく、ここ数年を見ても130%の店舗もあれば、60%ぐらいのところもあって、平均するとそんな数字になっていますが、景気はあまり関係ないと感じています。結局のところ誰がやっているかにつきると思うんですね。良くなる人がやっていれば景気なんて関係ないですよ。売上が悪いと言っているのは不景気を言い訳にしているだけであって、分析としては景気の影響はあるかもしれないですが、あまり関係ないと思っていますし、それに対する手立てを講じないかぎり、分析なんてただの自己満足に過ぎないですよね。各店舗にあった販売促進やプロモーションをしっかりやっていけばこれまでのお客さんを繋ぎ止めることはできるだろうし、新規のお客さんにも来てもらえるんじゃなかと思います。

 

――同じCoCo壱番屋でも活気のある店とそうでない店があるんですね。不景気と言ってもカレーは食べますからね。どこで食べるかが大事ということですよね?

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その通りです。どこで食べるかが問題なんです。弊社がライバルとして認識しているのは一般家庭で食べられているお母さんや奥さんが作るカレーなんです。家庭でどれだけカレーが食べられているのか、生産量から算出したデータによると、週に1回はカレーを食べているという統計があります。1ヶ月でいうと計4回ですよね。それを1ヶ月2回は家庭で食べてもいいから2回はうちの店で食べてもらおうと。うちが目指すところはそこなんですよね。例えば、小さなお子さんが多い新興住宅地であれば、来店時に不都合を感じてもらわないように、トイレにオムツが替えられるベッドを設置するなど、その地域で来られるお客さんに合わせた店づくり、改装なんかもしています。もちろんバックヤードはチェーンシステムで動かすんですが、フロント部分は店ごとに変えてお客さん自身でお店を選べるようにしたいなと思うんです。だから、チェーン店として多くの縛りを設けるのではなく、自由に考えてもいいということにしています。もちろん何かを進める際には申請してもらいますが、販売プロモーション等を含め、個店ごとに来られるお客さんに合わせた店づくりを独自でやってもらっています。そうじゃないと生き残っていけませんよね。それが今の最大のテーマであって景気はどうでもいいんです。ただ1つ言わせてもらうと、数年前から起こっているデフレについては正しい競争をしなければならないと思います。よそに勝つためにシェアを取らなきゃならない。その為に価格を安くするなんていう、本質から外れた競争についてはしっかり歯止めをきかせ、価格を守ることはもちろん、価値のあるものをしっかり提供し、本来あるべき姿を守り続けようと思っています。

 

――ではそんな売上げの良いお店の事例等があれば教えていただけますか?

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そうですね、例えば蒲郡市にある店の事例ですが、蒲郡は近くに漁港があります。そしてそこには加工する工場があるので、そこに目を付けた店長がその工場へ行って魚を仕入れ、お店でパン粉をつけて魚フライを作ってトッピングにしています。チェーン店としてはあるまじき行為ですが、新鮮な魚を仕入れてトッピングとして利用する点なんかは工夫していますよね。他にも滋賀のお店の事例ですが、地元で鹿肉を買ってカレーにトッピングしているお店もあります。これは地元で鹿肉が余っているということから始まったんですが、結局お店というのは地元の方に可愛がってもらわないと生き残っていけないし、道の駅で地元の野菜を仕入れるのもいいと思うんです。材料を本部から仕入れないから本部の売上げとしては減るんですが、少なくともカレーは売れます。そして、それにより全体が発展するんですよね。そんな良いことであればどんどん進めたいと思っています。また、店長の多くは地元の近くに住んでいるんだし、地元を大切にするってことに気づいて商売できれば、来てくれるお客さんの顔も覚えるだろうし、地元の行事にも参加するだろうし。これまでチェーン店というのはそういうのを排除してきたんですが、それでは生き残っていけないんですよ。いつも来てくれるお客さんがどんな注文をし、いつもと違う注文を受けた場合は、その違いに気づいて一声かけてあげるとか…。こういうことが本来の商売人の姿だと思うんです。だから私達はそこを目指しています。お客さん一人一人それぞれのCoCo壱番屋になれればいいなと思っています。

 

 

――少し話題を変えますが、最近では日本の企業はどんどん海外にも進出しており、御社も中国、韓国、タイ、シンガポールなど7か国に出店していますが、まずはアジア圏から出店するなど、戦略的に出店先を決めているんですか?

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特に戦略はありません。ただ、海外で成功する為に以下の3つの要素をベースに出店先を検討しています。まず1つ目は、良いパートナーと出会うこと。2つ目はパートナーと共に汗をかくこと。そして最後の3つ目は、ビジネスのコアをあまりその国に合わせるようなことはしないということです。これが基本的に軸にしている3要素です。そしてそれに加え、一定の治安の良さがあり、ある程度経済発展しているところですね。国ごとというよりは、エリアで区切った方がいいと思いますが、目安として米ドルで一人当たりのGDPが$5000というラインは外せないと思っています。先日もベトナムに視察に行ったんですが、ホーチミンで$3700~3800ぐらい、ハノイだと更に低くて千何百ドルと聞きました。実際現地にはロッテリアが100店くらいあり、ケンタッキーもありました。でも、うちが出店するのはまだ早いかなと思うんです。米ドル$5000というのはあながち間違っていないなと。日本は大阪万博の時にその水準を超えたんですが、この数値が自国のものでなく外国産が流通し始める水準だと思います。遠いからいけないけどカレーが日本に来たのはイギリスからですし、イギリスに留学していた学生に聞くと、ホームパーティでカレーを作るととても喜ばれると聞きます。だから出店先としてイギリスも面白いかと思います。そして、カレーの本場であるインドにも行きたいですよね。インドに関しては国内に向けてもいいメッセージになると思うので、売上とか関係無しに、本場で勝負するという意味で行くことに意義があると思うんです。だからインドに関してはいつでも行ける準備はできているので、あとはパートナー次第ですね。

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