東海エリアを中心に今や関東、関西エリアに85店舗を展開する株式会社ジェイプロジェクト(名古屋市中区 代表取締役・新田治郎氏)。外食不況をもろともせず前進し続ける同社の打ち手は「選択と集中」という。常に時代を読み、新しい業態への取り組みを行いつつ、確実に利益を出す体制をつくるジェイプロジェクト躍進の組織力、十年後の展開を新田氏が語る。
――ジェイプロジェクトではGM(ジェネラルマネージャー)制度がありますよね。この制度の詳細、またメリットは?
GM制度というのは、役員以外の従業員は全て立候補することができ、店舗運営に関わる全ての決定権を持ち、給与についても一部を店舗利益に連動した成果報酬制を導入した制度です。
GM制度は、従業員のモチベーションを上げるのには良かったと思います。飲食業はスタッフのモチベーション次第で売上が20~30%増減する世界です。例えば芋蔵のある店舗では前比130%。場所も業態も、前期とは何も変わってないのだから、30%も上がるのは外的要因とは考え難い。スタッフのモチベーションを変化させるキッカケが、GM制度だと思います。
企業は、連帯感と達成感と公平感があれば、おのずと繁栄していきます。連帯感と達成感に関してはスタッフが持つもの作るもの、公平感は会社が与えるもの。
会社が小さいときは、「社長が言っているんだから」で済んだかも知れないが、企業が大きくなっていくとそういうわけにはいかなので、会社側がスタッフにきちんと公平感を与えてあげることが必要なのです。また、そうすることで連帯感と達成感も自然と生まれていき、店舗全体、会社全体に活気が出てくるのです。
違う地域で働いても、違う時間帯に働いていても、みんなの情熱が一つになれる存在「心の社旗」が欲しいという考えのもと、硬式野球部の設立を決心しました。
自分がプレーしていなくても、人を応援できる人間は強い。他人の成功を自分のことのように喜べる人間。そういう人間関係が店の中にあれば、必ず雰囲気も良くなっていくものだと思っています。
まず、皆さんびっくりされるのは応援団の数。当社の応援団はチアリーダーも含め全員が社員です。一生懸命、チームの勝利のために一丸となって応援できる人間が多いというのは企業としての強みだと考えています。
――昨年の10月にオープンされた「G-SEVENS」にも、新田社長のそういったお考えが反映されていると聞きましたが、そのあたりをお聞かせ頂けますか?
飲食業界は、隣に違う飲食店ができたからといってそれはライバルではないのです。そういった考えのもと、みんなで作った飲食ビル、それが「G-SEVENS」です。
出店者同士、頻繁に集まって、できるだけコストを削減してみんなで利益がでるよう話し合いました。例えば掃除に関しても週一で各店舗が担当して、自分たちでやる!もし行き届いていないところがあれば遠慮せずに言い合います。ビルのオーナーとして、清掃業者を入れることはできますが、その分が各店の負担になるわけですから、だったら自分たちでやろう!という発想なんです。
また、そうすることによって仲間意識が高まります。例えば、小さい店舗であれば、お客様が溢れることがありますよね。そういう場合も上下階の店舗を紹介でき、店同士が協力し合えるのです。
それが隣にあるだけでお互いの協力関係がなければ、そこまではしない。せいぜい別のエリアにある系列店をお客さんに紹介するくらいでしょう。
G-SEVENSでは、売上も隠さずオープンにしています。他店と比較することによって、競争意識も高まり改善点なども見つけやすい環境です。他店のお客様から聞いたマイナス点も、遠慮なくその店舗へ伝えます。
ウエルカム!バッドニュースなのです。
お互いが刺激し、勉強し合える関係がG-SEVENSにはあります。店長たちも自発的に店長会をしていますよ。僕も、スタッフにはできるだけ情報をオープンにしなさいと言っています。僕たちがやっていることを仲間に隠す必要はないと。ビル自体に人が集まることが大切なんです。
これは、飲食店の正しい在り方だと思っています。今の時代、共存していく必要があると考えていますから。情報が共有できるのは必要なことなのです。おかげさまで、各店、売上も好調です。
――昨年、猿cafeの株式会社SARUとの業務提携もありました。経緯についてお聞かせ下さい。
豊富な物件情報量や規模による仕入れコストのメリットが当社の強みです。そして、東海地区での猿カフェのブランド力は圧倒的で、多くのファンを持っています。お互いが組むことで全てにおいて、双方にメリットがあると確信し業務提携を決めました。
――若手経営者へのご意見は?
今のままでは、十年先はかなり厳しいと思います。さらに弱い店舗は淘汰されていく時代が進んでいくでしょう。
だからこそ、考えていかなければいけないのです。
地元のライバルに対抗する意識だけで経営をしていると、良い結果は生まれない。外からの大きな資本が参入してきたとき、いかに太刀打ちできるか、ということなんです。
狭い名古屋だからこそ、連携しなければいけない。自分だけが残ろうと思っていたら残れないと思います。
業界全体のことを考え、協力して共に戦わなければなりません。隣の店舗は敵じゃなくて仲間です。
――ジェイプロジェクトの十年後のビジョンをお聞かせ下さい。
チャンスがあって商売として成り立つのであれば、国内外問わず出店していきます。
また、これは社名の由来でもありますが、一般的には飲食業界の企業名にはフードやテーブルなど飲食をイメージする言葉が入ったものが多いと思います。
僕たちは、様々な可能性を秘めており、それがビジネスになるのであればどんな分野にも参入していくという考えのもと、あえてジェイプロジェクトという名前にしたのです。Cafe事業やフラワー事業との提携もその一例です。
十年後は、飲食事業に関る新しい分野の事業が、更に増えていることを期待しています。なぜ新しい事業を増やしたいかって、それは新しい仲間と出会えるからです。
企業にとって一番大切なのは、やはり人であり仲間ですよ。
企業データ
会社名 : 株式会社 ジェイプロジェクト
本社所在地 : 愛知県名古屋市中区栄三丁目4番28号
設立年月日 : 1997年3月3日
社員数 : 1388名(正社員363名)
資本金 : 700,622千円
売上高 : 93億円
店舗数 : 85店舗
URL : http://www.jproject.jp/
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