名古屋の台所といえば柳橋市場。そこから少し歩いた所に京の町屋を思わせる佇まいがある。そこが今回紹介する「炭焼割烹 わらじん」だ。 迎えてくれるのはしっとりとした着物を身にまとった女将。来店すると“いらっしゃいませ”と温かかく迎えてくれ、女将の優しいオーラと割烹料理店には珍しい大きなシャンデリアが客の目を引く。店内にはカウンター席をはじめテーブル席、半座敷、個室などシーンに合わせて選べるスペースが用意されており、ちょっとかしこまった席での利用が多い割烹料理店には珍しく、お洒落でモダンな雰囲気が漂うお店だ。女将に店のコンセプトを聞くと、「市場から近いという利点を活かした旬の食材を、美味しいお酒と上質な空間で楽しんでもらえるような“大人の隠れ家的和食ビストロ”を作りたかった」と語る。前途のように名前に割烹とあるだけ少し敷居が高く堅苦しい感じがするかもしれないが、ここは違った感覚で豊富なお酒と毎朝仕入れるバラエティに富んだ食材で和食が味わえる割烹料理店だ。 気になる料理は料理人が毎朝市場へ出かけ素材を見ながらその日のメニューを考えるというから毎日違った品々がラインナップ。おススメは「お造り(800円~」や「鱧と松茸しゃぶしゃぶ(1800円)」だ。お造りはその日仕入れた新鮮な魚介が盛り込まれた贅沢な一皿で、酒のあてに注文する客も多いという。また地元の鶏を使った「名古屋コーチン炭焼(1200円)」や自家製「甘鯛一夜干し(1500円)」などの炭焼料理、カウンターにずらりと並ぶ「おばんざい(500円~)」も訪れる客の舌を唸らせている。そして、忘れてはならないのは「懐石コース(5250円~)」!旬ものをコースに取り入れているから毎月内容が変わり、中でも「八寸」という少量ずつ一品料理を盛り合わせた一皿がコースに花を添え、器も有田焼を使用し繊細で華やかな絵付けと料理の彩りが味だけでなく客を喜ばせてくれる。さらに注目したいのは炭焼だ。肉・魚などから客自身が好みの具材を当日注文することができるので、接待時や幹事が事前に予約をした場合でもちょっとしたおもてなしとして振る舞うことができるのも魅力だ。 料理に合わせるお酒にも注目したい。高山麦酒や焼酎・日本酒・ワインなどの種類が豊富で、特に蔵元から市販されていないお酒やタンクの中で一番いい部分を仕入れた「生酒」を一合から楽しめるので酒好きにはもってこいのお店だ。もちろんお酒に詳しくない客も安心して来店できる。どんなお酒を合わせていいか分からなくても、料理とお酒を知り尽くした女将に相談すれば好みを聞きだしピッタリの酒を選んでくれる。 旬の食材にこだわったバラエティに富んだ割烹料理と自信を持って揃えたお酒の数々。接待などかしこまったシーンでの利用だけでなくプライベートでの普段使いはもちろん、いつ行っても、何度足を運んでもその時々で料理とお酒が楽しめる同店。様々な飲食店が立ち並ぶ名駅界隈ではお店選びにも苦労するかもしれない。でもここは名古屋の台所近くの一隅を照らす特別な店としてファンに愛され続けるだろう。
(取材=藤川)