高卒採用コンサルティングに特化して10年になるハリアー研究所が今、東海のフード業界に新しい風を吹き込んでいる。今回、その仕掛人であるハリアー研究所(大阪本社)の代表取締役である新留英二氏に意気込みを訊いてみた
ハリアー研究所が高卒採用に特化した理由は?
決して最初から高卒採用に特化してやると決めていたわけではありません。一つはハリアー研究所のスタッフ全員が私も含め元リクルート出身者でHR系(人材採用コンサルティング)を得意としていたこと、そして高卒採用市場はリクルートを代表するリクナビ(大卒採用)のようにマーケットが大きく成熟市場ではないので、小さな会社が戦うにはライバルのいないブルーオーシャンであったということ。但し小さな市場で、しかもハローワークを介して無償で採用することが当たり前のようになっているので最初は企業様に弊社の価値、高卒採用の価値を理解していただくのに本当に苦労しました。しかし、お陰様でハリアー研究所は今年、創業10年目を迎えることができました。伝道師のように地道に高卒採用の啓蒙活動や新規求人開拓を行ってきた結果、弊社の高卒求人サイト「ハリケンナビ」への掲載企業は100社を超えました。関係各位の皆様のご支援、ご声援のお陰であると心より感謝申し上げます。なぜ今、高卒採用なのか?高卒採用市場の動向について教えてください。
高卒就職者は毎年、約15万人以上が輩出されています。厚生労働省は今春卒業の高校生の就職内定率が、1月末時点で86.4%になったと発表しました。これは前年同時期を2.9ポイント上回り、この時期としては2年連続の改善となっています。要因として東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県では復興需要などで求人増加が目立っており、首都圏など県外への就職増も相まって内定率が上昇したといえます。しかし、現実は製造業の国内空洞化による大幅求人減や大企業を中心に大卒求人への偏重等、相変わらず高校生にとって就職難であることに変わりありません。2012年3月の日本の高校卒業予定者は約106万人、そのうち就職希望者は高校3年生春の段階で約19万人いたものが3年生秋の段階では16万人に減少しています。厳しい就職環境の中で途中で就職を断念した生徒や希望職種がないためにフリーターとなる生徒は毎年数万人に上ります。さらに、弊社が毎年調査している高校新卒入社者調査によると、就職を希望した理由の中で、親(保護者)の経済的事情で高校入学した時点から就職選択しかない生徒が急増しています。大卒進学率が高止まりする中、一方で最初から就職するしかない生徒の急増。この傾向は今後も間違いなく続くと思われます。ハリアー研究所はこのような事態を少しでも改善するために高校生が望む新しい求人開拓と就職ミスマッチによる早期離職を防ぐことを目標に一人でも多くの高卒就職者を社会に送り出すことが、結果的に明日の強い日本を築く原動力になると信じて今後も努力していきます。
貴方が就職を希望した理由は?【2011ハリアー研究所調査】
なぜ今、高卒採用なのか?高卒採用の魅力について教えてください。
何といっても高校生の一番の魅力は純白、純粋無垢であることです。就職希望者の内、アルバイト経験がある生徒は既に80%に達しており、企業の入社後の戦力化には時間は掛らなくなってきています。しかし、18歳という年齢なのでまだまだ社会人としての意識や判断が甘いのも確かです。でも、私はこれこそが高卒の魅力だと思います。何も知らない分、何でも吸収する力と容量があるということです。世間の価値観に染まっていないからこそ、会社の理念や価値観をしっかりと注ぎ込むことができる。先入観がないので素直に理解して一生懸命に取り組んでくれるのが何よりの高卒採用の魅力なのではないでしょうか。これは余談ですが、携帯ショップを経営されている弊社のお客様で全国販売キャンペーンに高卒新入社員が入社1年目で全国5万人いる販売スタッフの中で5位に輝いたという話がありました。要因は指示された事を迷わず一生懸命にやった、ただそれだけなんです。高校生は親身になって基本を教え込めば間違いなく応えてくれると思います。決して人材育成に悩む必要はありません。仕事の基本や考え方、価値観をしっかり教えること、そして常に見守ってあげる、声をかけてあげる、それだけで十分だと思います。大卒のように難しい言葉も理屈も必要ないのです。そして、もうひとつの魅力は人件費の削減です。平均初任給は高卒の場合16万円弱となっており、大卒のそれとは▲30%ダウンという低さになっています。また、パートの社会保険加入条件の引き下げ(週20時間以上)や消費税のアップによる派遣・請負のコスト増等を考慮すると固定人件費の削減による経営効率の向上を同時に図ることができることが、今厳しいデフレ経済の中を飲食業が勝ち残る必要条件になるのではないでしょうか。
ハリアー研究所の強みを教えてください。
私達はあくまでコンサルティング会社であると位置付けています。NHKの報道特集番組にも取り上げられた弊社が企画運営するハリケンナビは1日3万アクセスを誇る高校進路指導部の先生や就職希望の生徒が愛用している就職求人サイトですが、高卒採用はリクナビ・マイナビ(大卒採用)のようにネットだけで全て採用ソリューション出来るわけではないのです。毎年の学校訪問や名刺交換会、イベントの実施等により全国の高等学校進路指導部の先生方との信頼関係を築くこと、先生方のご支持、ご理解こそが最も重要なのです。また、一般求人と異なり公正採用は勿論のこと、1人1社応募制や選考方法、採否結果報告など、特別なルールのあるハローワークが管轄する高卒求人業務を弊社が丁寧にお手伝いすることにより、初めて高卒採用を行う企業様にとっては安心して実施することが可能となります。特にフード業界の経営者の方々にとっては現状の給与・待遇条件や課題をお聞きした上で1から高卒採用を設計していき、採用できるまで1年間の長期に渡ってコンサルティングしていくことが何よりも当社の魅力であり強みではないかと思います。さらに、今後は高卒入社者の早期離職を防ぎ定着に結び付けていくために教育研修にも力を入れております。リクルート出身者からなる会社ですので研修メニューは充実しており、しかも企業様がお気軽に申し込まれる費用になるよう驚かれる程の安さで高卒入社者を年間研修フォローできる体制をつくりました。ある意味ボランティアかも知れませんが高校生が定着できるのなら十分に価値があると思います。今後の展開を教えてください。
今年の元旦の新聞に掲載されていましたが、日本の10年後についてのアンケート調査で大半の世代が「衰退・後退」と答えているのに対して高校生を含む若者世代は30%の最も多くが「成長」と答えていました。まさしく、これからの日本の将来を担ってくれる若い世代が夢と希望を持って成長していける社会を創造していくことが私達大人や社会の役割であると強く思います。その中でハリアー研究所ができることは何であるか、何ができるのかを常に時代に即しながら考えていく必要があると思います。弊社としては、まず東日本大震災からの復興のさらなる一歩として東北復興支援採用を強化していきます。今春3月に東京オフィスを開設した最大の理由はそれです。東京が東北エリアからの県外就職求人をしっかり担保することが急務であると考えたからです。そして、将来は高校新卒就職者の若い人材が海外に羽ばたくようなグローバルな人材に育って欲しいと願っています。今、日本経済だけを見ると非常に閉塞感が強いですが、アジア、特に東南アジア(シンガポール、マレーシア等)に目を向けるとその成長は目を見張るものがあります。私は高卒就職者の方々が海外で働けるような環境・仕組みづくりこそがこれから重要ではないかと感じています。一部の優秀な大卒者だけではなく、高卒の新人がシンガポールの飲食チェーンで働いている姿、そこでは難しい英語など要りません。必要最低限の英会話で十分なのです。勇気と希望、そして強いハングリー精神があれば高校生も十分に海外で戦えるはずです。そして彼ら(彼女ら)にアジアンドリームを掴み取って欲しいと願っています。