1998年イタリアレストラン「アンティキ」をオープンした林哲氏が、「レストランでは出せない料理や素材を気軽に食べてもらいたい」との思いで、2005年オープンさせたのが「ローマ三丁目」だ。 オヤジが通う日本の焼き鳥屋、おでん屋がイタリアンだったら?というコンセプトでつくられた同店のターゲットは、ダサカッコいいオヤジたち!しかし、店内へ入ると男性客に勝る女性客の多さに驚くだろう。 これは私の推測だが、ダサカッコいいオヤジたちに連れられ来店した女性客が、気軽に美味しいイタリアンを食べられる店として女友達と通っているのでは?と思う。そういった点では、まさに林氏の思惑通り。夜な夜な大人の男女が訪れ、賑わう店となっているのだ。 バール業態をビジネスとして捉えると「どうしたら、アルバイトでも調理できるだろう」という発想から始まるが、ここローマ三丁目で厨房に立つのはイタリアンシェフである店長のみ。 気軽な雰囲気ではあるが、客に提供される料理一つひとつは手間がかけられ、料理人の腕を感じる本物と言えるだろう。 メインの肉料理は羊や豚、鳩など15種類が味わえる。ほどよく焼かれ、それぞれの個性を引き出している炭火焼は男性客のみならず女性にも人気。 また、イタリア風のおでん「ボリートミスト」も是非、オーダーしたい。内蔵肉を腸詰めしたソーセージを野菜とともに煮込んだポトフ風の料理で、コラーゲンもたっぷりだ。 これからの時期にオススメなのは鴨、シカ、うずら、イノシシなどのジビエ。 ジビエは焼きすぎるとパサパサになり旨味がなくなってしまうため、ちょうどよいギリギリまで火を通す。焼き加減が難しいからこそ、料理人の腕が分かる一品。 仕入れによって変わる本日のオススメにも注目したい。取材当日の黒板に書かれていたメニューを一部紹介すると「ギアラ(赤センマイ)の煮込みトスカーナ風(¥1500)」「フランス産 マネッシュ豚ヒレ肉のサルティンボッカ(¥1800)」「スペイン産 カタールニャ豚肩ロースのコンフィ(¥1800)」。 壁一面のワインセラーを見ると、コメントラベルらしきモノが下げられている。その日の気分でコメントを参考にセラーから自分で選び、勝手に出して飲んでもよい気楽なシステム。最近では、林氏がワイナリーへ行き、交渉し直接輸入しているためクオリティの高いワインをお手頃に楽しめるのも嬉しい。 現在、「アンティキ」「ローマ三丁目」「フィレンツェ三丁目」「クラッセ」と4店舗を経営する林氏に次なる構想を聞くと「やはり面白いことをやりたいですね。次は名古屋市内ではなく、地方へ出て行くのも一つだと考えています。現在はイタリア ミラノで飲食に関する事業を進めていますが、イタリアンをやるというよりは日本人魂を見せるプロジェクトといったほうが近いかも知れません。日本の料理人たちは皆、切磋琢磨し頑張っていますがなかなか芽が出ないのが現状。皆が前向きになり、夢を持ち活躍の場をつくれるようにヨーロッパの拠点として、新しい架け橋となっていければと思っています」と語る。 日本魂を伝えるべく新しいプロジェクト、次なる店舗展開など林氏の今後に益々、期待が高まる。
(取材=伏屋みかこ)