日本のフレア・バーテンディングの草分け的存在、滝藤育伸氏(TATULA代表取締役、全日本フレア・バーテンダーズ協会副会長)の手がける「TATULA」が今、新しい遊び場を求めている30代前後の目利き客たちから、注目を集めている。
一般的にはあまりなじみのない「フレア・バーテンディング」という言葉だが、トム・クルーズ主演のアメリカ映画「カクテル」(1988年)といえば、ピンとくる人も多いのではないだろうか。そう、ボトルを投げたり回したりしながら、曲芸のごとくカクテルを作る、あれである。滝藤氏自身も、オーセンティックのバーテンダーだった時代にフレアと出会い、当時のフレア・バーテンディングの世界チャンピオンが参加するイベントに携わったり、海外のバーへ学びに行ったりと勉強と練習を重ねたそう。
滝藤氏がフレアの世界を深く知るにつれ大きくなった「日本にフレアの文化を広めたい」という思いが、「TATULA」と日本のフレア文化の始まりとなった。“良質なお酒と料理が楽しめる日本のバーの良さと、フレア・バーテンディングのエンターテインメント性を融合したバー”をコンセプトに、名古屋栄の激戦区に2004年、1号店をオープン。「お客さんに満足してもらえれば、必ず集客は増えるはずだ」という信念から、オープンの2年間は一切の宣伝を拒否したというから驚きだ。滝藤氏の信念通り口コミが集客に繋がり、現在では新しい遊び場を求める30代を中心に満席の日が続く。そして今年の2月には、ついに2号店を名古屋伏見にオープンするに至った。現在、全日本フレア・バーテンダーズ協会会員からは「フレアの店を出すなら、名古屋のTATULAを手本に」というのが通説になっている。滝藤氏の熱い思いが、日本のフレア文化を広めたのである。
フレアに情熱を捧げる滝藤氏だが「フレアはおまけ」と語る。「気持ちの良いバーテンダーがいて、おいしい食事とお酒が楽しめて、フレアはその次」というスタンスのもとに、飽くまでも良質なお酒と食事に重きを置いている。各種アルコールは約300種類を常備し、カクテルは平均800円と、バーにしては安価な価格設定が売りのひとつとなっている。ロコモコ(980円)やピッツァ(1080円~)などの多国籍料理をはじめ、食事メニューも約60種類と豊富。
1店舗目を30坪40席の中型店、2店舗目を40坪の65席の大型店で展開している「TATULA」が次に狙うのは、20坪程度のカウンターメインの小型店。ある程度のシステム化が必須となる中型・大型店ではできない、手間隙のかかった食と酒を提供したいとの考えだ。客とバーテンダーの距離感を縮め、バーの文化を愛する者同士の社交場を作ってみたいと、滝藤氏は語る。これからのバー文化を担う「TATULA」の展開から、ますます目が離せなくなりそうだ。
(取材=佐藤 江美)
店舗データ
店名 | Delicious foods and Bar TATULA 伏見店 |
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住所 | 名古屋市中区栄1-4-9 加藤ビル2F |
アクセス | 地下鉄東山線・鶴舞線伏見駅より徒歩1分 |
電話 | 052-222-2268 |
営業時間 | 17:00~翌1:00 |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 40坪・65席 |
客単価 | 3000円~4000円 |
運営会社 | 株式会社TATULA |
関連リンク | TATULA |