飲食店・レストランの“トレンド”を配信するフードビジネスニュースサイト「フードスタジアム東海」

インタビュー

「甲羅本店」や「赤から」などを全国に展開する株式会社甲羅は今年で40期を迎える。多業種多業態で「また行きたくなる」店を作り、支持され続けてきた秘密を社長の鈴木氏に迫る!

株式会社甲羅は1969年の創業以来、甲羅本店、旬蔵、赤からなど全国に100店舗以上を展開する巨大グループ。長きに渡り成長を続け、厳しい時代も乗り越えてきた鈴木社長に店作り、組織作りの本質を聞いた。


――デフレ状態の今、280円居酒屋などを見てどう思われていますか?

intervew_0601.jpg時代の流れに乗って仕方なくやっているところと、戦略的にきちんとやっているところの2タイプに分かれていると思っています。こういう時代だから安いところにお客様は集まりますが、仕組みをきちんと作り、FLコストを合わせ、人件費を削減しながらやっていかなければならないのではないでしょうか。280円という決まった単価の中でフードやドリンクのコストを合わせていかなければならない。そうするとフードはお金がかけられませんし、商品としては良いものが出せないことがネックになっていく。タッチパネル式で人件費を落としていかなければならずサービスは低下してしまいます。今後の流れとしてはデフレ居酒屋の形態は次第になくなっていくのではないかと考えています。

もちろん生き残るところもあると思います。商品力やシステムを磨き極めるところは残り、時代の流れで始めたところはなくなっていくという両極端になっていくのではないかと考えています。
だからと言って私達がこの業界に参入していくということは考えていません。
 

――社長の今までの経験を基に、この景気の悪い時代をどう乗り切るといいか、店づくりの視点からアドバイスをお願いします。

厳しい時こそ、きっちりと固定客すなわち常連を作っていくことが大切です。そのために大切なことは3つあります。

まず1つ目は「店づくりよりも人づくり」を考えること。オーナー自身が店に出ている店は、オーナーにお客様が付いています。オーナーが何店舗か持っていて店に出ていないところは店長の教育をしっかりと行うべきです。
飲食店というものは、店にお客様がつくのではなく、店長や従業員にお客様がつくものです。そのために大切なことはお客様の顔と名前を覚えること。次に来てくれた時に「○○さんお久しぶりです!」「○○さん元気ですか?」などと声をかける。お客様が名前や顔を覚えてもらえていて嬉しいという気持ちが常連さんになっていくのです。そのことができる店長や従業員の教育が必要です。「テーブルに何か問題はないか?」「忘れ物はないか?」「灰皿は変えなくていいか?」「注文を取りに行かなくてもいいか?」「こぼしたらさっとふいてあげる」といった目配り気配り心配りをすることでファンはできていきます。
オーナー自身が店に出ているところは自然とそれをしていているはずです。人を雇って店を何軒も増やしていこうとする時にはついつい「店づくり」にばかり力を注いでしまいがちです。そうではなく気配りのできる店長や従業員を沢山育てれば店は何軒でも増やすことができるのです。

2つ目は「QSC(クオリティ、サービス、クレンリネス)の徹底」です。格好良い店、雰囲気のいい店は初めに感動したとしても3回も通えば慣れてしまいます。最終的に美味しかったり、より良いサービスがあることで「また行きたくなる店」へ繋がると考えます。
私が経営している赤豚屋のような目新しい店でも、いくら面白く格好良くても、働く従業員の態度や提供される料理が良くなかったら来なくなります。飲食店に限らずすべての企業に言えることだと思いますが、QSCの3つが揃っていなければ展開できないと思っています。

最後に3つ目は「現場第一主義」を貫くこと。私はすべての答えは現場にあると考えています。売り上げや客単価が上がらないとパソコンの前で悩んでいても何も見えません。実際の店舗に行き、従業員の動き、お客様の層を自分の目で見ることで理由が見えてきます。
最近の若い経営者の人は「○○の店が流行っているから見に行こう」などと他店を見に行く傾向にあると思います。もちろん他店を見ることも大切ですが、自分の店がガタガタになっていないか、QSCは徹底できているかなどまずは自分の店を自分自身できちんと見つめ、地固めすることを意識するべきではないかと感じています。
 

――では会社として組織作りという面ではどのようにお考えですか?

intervew_0602.jpg私が毎年必ず行っているのは、トップである私からのメッセージを明言化することです。自分が進めたい方針やビジョンを明確に従業員に伝え、今年はこうするぞ!と言葉にしてメッセージしています。
40期となる今年度は「4444(ヨンヨン)計画」を打ち出しています。具体的には、「40期に40万人のポイントカード会員を作る。そして会社全体で400万人のお客様を集め、お客様一人当たり100円の単価を上げることで4億円の売り上げを目指す」ということ。今、会社が何をしようとしているかをきちんと伝えることが大切です。

また、組織で動かすということも取り組む必要があると思っています。
今まで、赤から事業部では第1事業部から第5事業部までエリア別にすべてバラバラに行ってきました。今後はすべて一本化し、組織として機能させたいと考えています。事業部ごとに行ってきた計画やイベントを組織全体で行う。そうすることで、印刷物などのすべての面でコストダウンにもつながります。そのためにはチームワークを意識させコミュニケーションを取り、システムとルール化をきちんとすることが大切になってきます。
組織で作り上げたシステムとルールを従業員へ徹底的に教育、育成することが重要です。
どの店舗でもマニュアルがあるかと思いますが、最初の研修で使用しただけで終わってしまっていることが多い。それではあまりにもったいない。組織で作り上げたマニュアルを教え込み、成長させて、会社の役に立ってくれる「人財」、今後の会社を成長させてくれる「人財」を育てていくことが大切です。

ちなみに飲食業界の中で生きていく人は3つのタイプしかいません。会社から独立して自分の店を持つ人。会社に所属して幹部になっていく人。そして転々と店を替わり続ける人。もちろん私の会社にとって大切なのは幹部になっていく人です。優秀な人財を作ることが私の大切な仕事だと思っています。

固定ページ: 1 2

インタビュー一覧トップへ


飲食施設の分煙環境整備補助金の取り組み
Copyright © 2014 FOOD STADIUM TOKAI INC. All Rights Reserved.