飲食店・レストランの“トレンド”を配信するフードビジネスニュースサイト「フードスタジアム東海」

インタビュー

約10年間で神谷デザイン事務所が手がけた店舗は1000店を超える。「ただ格好の良い店をつくることが店舗デザイナーの仕事ではない!手がけた店が繁盛して、初めて仕事の完成となるのだ」と語る、神谷会長が思う飲食業界の今と未来のあるべき姿とは…。

本社名古屋を1987年に設立し、今や東京、大阪、福岡、韓国に支社を持ち、国内外を問わず、アメーバ的広がりをみせる神谷デザイン事務所。1000件以上の店を手がけた豊富な体験の中から考え出される繁盛店の秘訣を代表取締役会長・神谷利徳氏に聞いた。


――昨今の飲食業界をどうみていますか?

デフレ居酒屋と言われる現在、なるべくイニシャルコストをかけず半年くらいで投資回収をするビジネスモデルでないと、時代の移り変わりの早さからみても、難しいと思います。また、焼酎が無料など完全に本来の飲食店というサービスを超えてしまっているのも実状です。
言わば、本来の原価にサービス料をプラスし安価で喜んで頂くという、本来のビジネス構造ではなくなってしまったと言えるでしょう。
それはそれで、まさしく今の象徴的なものだと思いますが、僕としては一過性のものだと捉えています。
しかし、社会の大きな流れとして、確実に価値観や意識が転換している時代。この時代に様々なチャレンジをしていないと、2、3年後取り残されてしまう可能性は大いにあるでしょうね。
飲食店というのは、飯という媒体を挟んだコミュニティ。コミュニティをつくれる会社経営をしていかないとデジタルや宅配や、新しいフードビジネスモデルに取られてしまうでしょう。そういった時流に対し、どんなお客様に対して企画提案していくのか、自分たちのキャラクターをはっきりさせてサービスを向上させていく必要があると思います。
これからの時代、同じモノを食べるのであれば家で食べたほうがいいという人が増え、店に足を運ばない人が多くなると思います。しかし、そういった人にも足を運んでもらわないといけないビジネスです。もっと自分たちがお客様や時流に対して、どんなサービスを提供できるかを考えチャレンジしていく必要があるでしょう。今、この時代にチャレンジしていない人は、次の変化が起こったときには確実に取り残されると思います。
新しいことを考えて、チャレンジしていける人だけが次の世界を見ることができ、新たな時代のスタートがきれる。わざわざお店へ行かなくてコミュニティができるデジタルの時代に飲食店は何を投げれるか、が大切だと思います。
 

――先日、居酒屋サミットでも空間に対する意見が両極ありましたが…。

int04_p1.jpg

例えば何十件、何百件という居抜きでやってきた店をリニューアルしていくエネルギーはとても大変なことだと思います。既存店のリニューアルというのはスター トダッシュの速度とは違いますから。しかもリニューアルしたからといってV字回復するわけではないので、最初の一店舗目に自分たちのアイデンティティを しっかり入れておくべきなのです。
僕たちの仕事である空間デザインをやりきったからといって繁盛するかと言えばそうじゃない。経営者がビジネスのバランスをとることが重要だと思います。極端に言えば、デザインしないというコンセプトもあるわけですから。
ただ、デザインをしないことと、居抜きの物件で適当にやるというのは全然違います。要は、見せ場が他にあれば良いのです。デザインが本来のビジネスモデルに対して、何パーセントの価値観があるのかという個々の考えや判断が大切です。
お金をかけないことがアイデンティティの会社は残るが、時代の流れに乗ってただ単にローコストで居抜きの物件でやっていく店は見向きもされない傾向が益々高 まるでしょうから。現在のような不況と言われる時代に、安くて悪いものにお金を使う人はいないというのが現実です。なので、さきほど言ったような自分たち のアイデンティティをしっかり持ち、お客様に何をどう提供していくのかという指針が非常に重要だと思います。

 

――今後の飲食店の空間デザインなどはどう変化していくと思いますか?

デザイン論で言えば、 インテリジェンスな層に対して、原始的なアプローチは一つのテーマではあると思います。店が続くということは、変化し続けていないと。変化し続ける空間を つくるということは、なるべく人間の手をかけないほうが良いので、僕たちは何をするかというと、マテリアルをコーディネートするのです。自然素材のマテリ アルをそのまま持って行き、あとは自然素材が朽ちていくのと同じ速度で味が出てくる。また同様にビジネスコンテンツで管理しながらやるとすれば、真っ白な 空間をつくって、3D映像を流して鳥が飛んだり川が流れてたりという時代になっているかも知れないですね。
逆説で面白いと思うのは、ダイアログ・イン・ザ・ダークという真っ暗闇の中で物ごとを体験するというデザイン空間。ドイツで始まり、赤坂にもそれをコンセプトにしたお店があります。

 

――神谷さんが面白いと思う次の外食コンテンツは

int04_p3.jpg

そ もそも健康・安心・安全は家食のコンセプトです。外食はそれプラス、エンターテイメントや感動や刺激を提供する必要があります。またお客様のニーズの変化 を捉える力も大切です。僕が一番大きなマーケットとして見ているのは、朝ですね。今の時代、働いている人が自分たちでスキルアップできる時間帯で一番効率 の良いのは朝だと思います。東京の丸の内では朝大学をやっていたり、業績の良い会社はブレックファーストミーティングをやっていたり、そういう流れでいう と都会であればあるほど、朝のビジネスモデルはあると考えています。
昔のように夜お酒を飲んで士気を上げるというのは無くならないとは思いますが、減っていくのは事実でしょう。

固定ページ: 1 2

インタビュー一覧トップへ


飲食施設の分煙環境整備補助金の取り組み
Copyright © 2014 FOOD STADIUM TOKAI INC. All Rights Reserved.